塔婆の意味
ストゥーパ⇒卒塔婆(ソトウバ)
卒塔婆はサンスクリッド語のストゥーパが語源になっています。
ストゥーパの音写が卒塔婆(ソトウバ)という言葉になっています。
ストゥーパは釈迦入滅の際、信者がその遺体を荼毘に付し仏舎利(遺骨)を八分して仏塔(ストゥーパ)を建てたとされています。
つまりストゥーパ=卒塔婆=仏塔ということです。
五重塔などの日本古来の仏教建築も仏塔(ストゥーパ)の一つです。
卒塔婆は追善供養の為
卒塔婆は追善供養の為です。
追善供養とは故人の冥福を祈り供養することです。冥福を祈り供養する気持ちは善行であり、現生の我々が善行を行い、故人がより良い世界に行っていただきたいと願う行為です。
人は亡くなると輪廻転生すると考えられています。
今我々が生きている世界は人間界ですが、生前の善行や悪行によって次の生まれ変わりも人間界とは限らないのです。6道あるどれかに生まれ変わると考えられています。
1,天道
2,人間道
3,修羅道
4,畜生道
5,餓鬼道
6,地獄道
生きている我々が善行を追加し、故人を少しでも良い世界に生まれ変わっていただきたいと思う行為が追善供養というわけです。
塔婆の切れ込みは五輪塔を模している
法要で塔婆をご覧になった時きっと誰もが思ったはずです。
塔婆の上部にある謎の切れ込みは何の意味があるのだろう?
塔婆板を造るメーカーによって若干の違いがありますが、大体同じような切れ込みがあります。
この卒塔婆の切れ込みは五輪塔を模したものになっています。
空輪
一番上は宝珠型で「空」を表しています。
塔婆の一番上がとがっているのは宝珠を表しています。
風輪
半円形型の風輪を表しています。
火輪
台形の笠は火輪を表しています
水輪
球型は水輪を表しています。
地輪
五大要素
古代インドでは「空」「風」「火」「水」「地」の五要素が宇宙を含むあらゆるものを構成すると考えられていました。
これらの思想がインドから東アジア一帯を経由し日本へと取り入れられ、真言宗・天台宗などの密教では五大を五輪と呼び
五輪塔となりました。
つまり五輪塔とは「空」「風」「火」「水」「地」の五要素を構成する供養塔なのです。
剣豪宮本武蔵の有名な兵法書「五輪書」も五大(五輪)が由来で、空の巻・風の巻・火の巻・水の巻・地の巻に分かれている事から昔の人は五大(五輪)は重要なものであると認識していたようです。
五輪塔は供養塔
時の権力者や王族の仏塔として豪華絢爛な五重塔や七重の塔など造られていた仏塔は時代と共に小型化されていきます。
- 五重塔や七重塔
- 五重塔で一番有名なのが高さ31M法隆寺の五重塔
現存しないがかつてあった東大寺の七重塔は100Mあったともいわれる巨大な建立物
- 五輪塔
- 五重塔や七重塔を簡素化した仏塔
- 卒塔婆
- 五輪塔を更に簡素化し省スペースを可能にした現代風な供養塔が卒塔婆というわけです。
浄土真宗では卒塔婆を建立しないわけ
浄土真宗では他宗とは違い、即得往生(故人が亡くなると、即極楽浄土に往生することができる)の考え方が大原則の為、追善供養という考え方がありません。したがって浄土真宗では卒塔婆は必要無いということです。
阿弥陀仏の大いなる導きで即得往生させていただいているのにもかかわらず、追善供養を行なう事は阿弥陀仏の力を否定している事と同じです。
だから浄土真宗では追善供養は必要ないのです。
そして追善供養のための五輪塔も必要ないということなので、浄土真宗では五輪塔を建立しないのが一般的です。
卒塔婆は建立するもの
卒塔婆は建てる又は建立するといいます。
卒塔婆を建立する場合は塔婆立てに入れ立てるのが一般的ですが、塔婆立てを造っていないお墓の場合、立てることが出来ない為、横に寝かせている方もいらっしゃいます。
これは卒塔婆=供養塔を横にしている事と同じです。
これはおかしいですよね。
供養塔である卒塔婆は必ず建立すべきです
塔婆立てが無い場合は必ず造って、供養塔である卒塔婆をきちんと建立することが大事です。
卒塔婆の種類
板塔婆
一般的に見ることが出来る板状の卒塔婆です。
卒塔婆には長さの違いがあり、4尺塔婆(約120㎝)・6尺塔婆(約180㎝)が主に使用されています。
霊園によって卒塔婆は4尺までに限るなど、長さ制限がある場合もあります。
経木塔婆(水塔婆)
主に関西地方でよく使われる卒塔婆です。
板塔婆は長さ約1m以上厚みが1㎝であるのに対し経木塔婆は長さ30㎝位で厚みが数㎜程度の超薄型・小型の塔婆です。
そんな薄型なのでペラペラなのが特徴。
そもそも経木とはスギやヒノキなど薄い木の板の事を言い抗菌効果がありますので、昔ラップなどない時代はこの経木でお弁当を包んでいました。
昔話では主人公が昼の弁当のおむすびなどを必ず経木で包んでいますよね。
経木塔婆は水に流して供養することから別名水塔婆とも呼ばれます。
七本塔婆
人が亡くなった後一般的には四十九日法要(七七日忌)を行う事が多いようですが、実際にはその前にも法要があります。
初七日忌から七日ごとに二七日忌(十四日)・三七日忌(二十一日)・四七日忌(二十八日)・五七日忌(三十五日)・六七日忌(四十二日)そして七七日忌が四十九日となるわけです。
その為本来は7日ごとに法要を行う必要があるのです。
七本塔婆はこの7つの法要の卒塔婆セットと思っていただければ間違いありません。
卒塔婆の処理
問題になるのはお焚き上げです。
昔は一般家庭の庭で物を燃やしていてもそれほどうるさく言われませんでしたが、現在は野外で焼却することは一部例外を除き禁止されています。
風俗慣習上または宗教上の行事を行うための必要な廃棄物の焼却(卒塔婆のお焚き上げなど)は例外として認められてはいますが、都心の寺院では住宅地がすぐ傍にある為、卒塔婆の野焼き等は周りの迷惑を考えると難しいのが実情です。
その為野焼きではなく産廃業者に処分を頼む場合もあるようです。
卒塔婆はいつまで建立するもの?
一般的には次の回忌法要の前に処分する方が多いようですが、明確な期日はありません。
お坊さんによっては朽ちるまで建てておくべき又は1日だけでも良いなどお坊さんの考え方により異なります。
ご自分の考えで決めて問題ありません。
しかし朽ちるまで建立するのは止めておいた方がいいかもしれません。
その理由としては
塔婆板は木なので劣化が激しく汚くなる
卒塔婆を立て過ぎると塔婆立て破損
卒塔婆を処分せずに立てっぱなしにしておくと、塔婆立てが木の塀のようになってしまいます。
台風シーズンや春一番など猛烈な突風が吹くと木の塀のような塔婆立ては強風をもろに受け止め、塔婆立てごと倒れる事があります。
古い墓所の場合特に気を付ける必要があります。
現代では印刷が増えている卒塔婆
ひと昔前は卒塔婆と言えば住職様が1枚1枚筆で書き入れているのが当たり前でした。
住職様は塔婆の書き入れなど墨を使った文字入れは修行の一つとも考えられており、実際ほとんどのご住職様は皆達筆です。
卒塔婆や過去帳への揮毫や戒名を紙に書くなど普段から墨を使った筆作業が多いので上手くなるはずです。
しかし、檀家の多い寺院では卒塔婆揮毫に多大な時間を取られる大変な作業なのです。
塔婆の板は自然木の為表面をよく見てみると相当デコボコしています。
この塔婆板に滲まないよう墨で書き入れる作業は簡単なようで難しく、神経を使い時間のかかる作業なのです。
そこで現代では卒塔婆プリンターで印刷する寺院も増えているようです。
手書きじゃなければありがたみが無いと言われる方もいます。
しかし手書き・印刷の問題では無く、
亡き故人を想い追善供養の為の卒塔婆を建立する行為自体に意味があるのだと思います。